天鵞絨色のエトセトラ ~Velvet-colored Etosetra~

天鵞絨色のエトセトラ ~Velvet-colored Etosetra~

課題レポートより頑張れている気がします。

夏がこの手を引けば 〜2023夏 関西1〜

お疲れ様です。さいがきです。皆さんご存知の通り、私は海無し県民なので、海を見るとテンションぶち上げになります。しかし、夏休みに入ってからというものまともに海見てねぇなと思い、南紀の海を見に行くことにしました。ついでにビッカメ案件も消化しようと思います。18きっぷ買っておいてよかった~。

 

ブレッブレで申し訳ないけど18:00すぎの日進駅からおはようございます。今回は人生初夜行バスということで、こんな時間に出発します。大宮駅の西口にはそこそこの本数が発着するので、まあうちからも割とヤコバは使いやすい交通手段ではあったんですが、今まで使ったことはありませんでした。なんでだろうね。

夕飯買って飲み物とお菓子を買い込みましたが、それでも時間が余って暇だったので大宮たんの写真を撮ってきました。サッカー女子です。野球のオレンジ色のチームは嫌いですが、サッカーのオレンジ色のチームはまあそこそこ好きな方*1なので、早くJ1に戻ってきてください。

ヤコバ乗る前にカフェインを入れるな。

もうじきバスが来るので乗車位置へ。蒸し暑いのでこの時間がクッソ長く感じられました。

ヤコバ逃さな師

大宮のマルイの地下に入っているダイエーで買ったハンバーグ弁当を食べてました。それからは暇なので寝ていました。さいたま新都心で客を拾ってから首都高で池袋東口、そしてバスタ新宿を通って横浜駅のバスターミナルに向かっていきます。

起きたら横浜でした。一応寝ましたがあんまりよく眠れません。てか腰がそこそこきつい。もう一回ちゃんと寝直していきます。起きたら三重県くらいがいいなあ...

なんでや!

寝て起きたら足柄でした。大して危機ではありませんでしたが、一応トイレに行くファインプレー。お茶を飲んでいたので次の休憩が安濃ということを考えると行っておいて正解だったと思います。

三重交通バスです。ちょい冷房が弱い気もしましたが、腰以外は概ね快適*2でした。今回は三交新宮駅前までバスに乗ります。次に起きたら桑名あたりがいいな...

静岡県から抜け出していないどころかまだ半分ぐらい残っていました。

結局愛知県新城市に入るくらいまでツイッターでエロ絵にいいねしたりゲームしたりして起きてました。最後に地図を見たときには長篠城駅らへんだったと思います。

おはようございます。湾岸桑名ICの手前あたりで目覚めました。ようやっと三重県に入りました。にしても寝付けないヤコバって暇すぎますね。まあ出発前にカフェインをぶち込んだ私もバカですけど。

津市の安濃でまた休憩です。安濃がある津市は安濃津*3があったために「津市」という名前なんです。安濃は古くからの地名で由来ははっきりしていませんが、とりあえず津市は平安時代は今の横浜レベルの港町だったわけです。知らんけど。何なら三重県安濃津*4と度会県が合併してできた県なので、まあ半分ここが三重県のルーツみたいなもんですね(は?)。

最後の悪あがきで大台町のあたりから寝ました。熊野市あたりで起きられれば万々歳でしたが、紀北町で目が覚めたので諦めて起きてました。

ちょうど6時を回ったくらいでいい感じです。体はバキバキですが、夜間に移動できる強みは今後も享受したいと思いました。

尾鷲市で降りる人がいなかったのか知りませんが、軽くスルーして熊野市に入りました。梅雨やら豪雨やらで6月から9月にかけてよく名前を聞きますね。思いのほか栄えているな、というのが印象的でした。まあこのあたりだと自治体ごとに生活圏が分かれるのかな?

御浜町です。紀勢線でいうところの紀伊市木やら阿田和のあたりになります。ミカンは和歌山の印象が強いですが、三重県でミカンを売りにしているまちに出会うとは思いませんでした。今度はゆっくり訪問して変な時期にミカンを食べに行きたいです。

紀宝町を通過し、新宮市に入りました。関西地方で長らく未踏だった和歌山県に入ります。いや和歌山って何となく行きにくいじゃないですか。ね?オタクもそうでしょ?大阪とか兵庫の方が先でしょ?

この時間は新宮駅前のローソンぐらいしか行くところがありません。なんか適当に買い物をしました。飴とか買ったかな。

新宮駅です。どことなく昭和の香りがしますね。東日本だとこんな地方都市でもピカピカの駅舎なのかよ、というところがまあそこそこありますが*5、西は意外と残っているもんなんですね。もっと新しくてこぢんまりした駅を勝手に想像していましたが、かつての風格を残し、堂々たる佇まいで驚きました。

くろしおに乗ります。なんだかんだ名古屋大阪どちらにも1本で繋っている駅なのですが、どっちに行くにも結構な時間がかかるので便利かと言われてもあまりそうは感じません。あくまで「観光地的には」立地がいいにとどめておいた方がよさそうです。

駅前にはぽっぽっぽ鳩ぽっぽの石碑がありました。たぶん私の知っている豆が欲しいかそらやるぞの鳩ぽっぽではなさそうです。

特急はくたか乗りたかったなぁ...

新宮駅にはくろしおの塗り絵が飾られていました。みほんの一部に強烈な違和感がありますが、みほんで他社の塗装をまんま使うはずが無いのでたぶん気のせいでしょう*6*7

新宮駅の裏手に出ると、ちょうどこの後の「南紀」4号に使われると思しきHC85系が入れ替えをしていました。紀伊勝浦までこの後回送されてた気がします。

せっかくなので反対向きだけどグリーン車に。

駅に戻ってきました。くろしお16号で新宮から北上を開始します。16号は現在283系の新宮始発の最後の運用になっているはずですので、せっかくなので逆向きながらパノラマグリーンを発券。案の定ですが白浜まで貸切でした。

駅舎が古めかしいとか何とか言いましたが、明るくてきれいな駅でした。今度は速玉大社などにも行きたいです。

 

それではいよいよオーシャンアローが入線してきました。

youtu.be

「海と太陽が大好きな列車」として1996年にデビューした283系"オーシャンアロー"。

製造時のコンセプト通り上品で洗練されたデザインの車両で、乗る前からわくわくしました。

グリーン車内は振り子設備の関係で座席が点対象に配置されているのが特徴です。ちなみに座席後ろにささっていたのは観光ガイドではなく「災害時の避難について」でした。

ちなみに283系はもともと伯備線に投入する案もあったようで、南紀地方を走る電車のくせして耐寒耐雪装備を搭載しています。まあ結局伯備線に入ることはありませんでしたがね。ただ「やくも」で走る283系もちょっと見てみたかったなぁ...

電車は出発して少し進めば太平洋沿いに出ます。穏やかな海で落ち着きます。

最初の停車駅は紀伊勝浦。温泉と滝が有名な那智勝浦町の中心駅で、近くにはマグロの水揚げで有名な勝浦漁港*8があります。「勝浦」は「葛浦」の転訛とされていて、千葉県の勝浦*9と同じく忌部氏に関連する地名とされています。ちなみに徳島県にも勝浦町があり、千葉県勝浦市和歌山県那智勝浦町徳島県勝浦町*10で「全国勝浦ネットワーク」なるものを結成しています。まあ徳島の勝浦は他2つとまるっきり風土が違う*11のでそれもそれで面白いですよ。

続きまして太地。クジラ漁が有名な太地町の中心駅ですが、駅の場所が駅の場所なので、かなり静かな印象でした。太地の捕鯨は度々海外から余計な批判を浴びているらしいです。実際はきちんと管理されたうえで、廃棄もなるべく少なくなるように行っているそうなので、持続可能性が高いと評価する学者もおり、一概にヤバい文化というのはご法度です。勿論変えていく必要があることだってあるとは思いますが、それは我々部外者がああだこうだいうものではないと思います。ただ健康被害が出ていないとはいえ、太地町の住民は毛髪中のメチル水銀濃度が高い傾向があるという調査結果もあるので気を付けて欲しいです。

次は古座です。古座川町の駅と見せかけてここは串本町に位置します。ただ、串本町古座と古座川町高池は市街地続きなので、実質ここも古座川町と捉えてよさそうです。古来から林業で栄えた地域で、古座川上流から材木を流し、下流地域で受け取ることで発展してきました。またウバメガシによる製炭業も盛んでした。古座川の炭は、江戸や上方の台所燃料として大変好評で、下流の高池にある佐藤家がこれをほぼ独占供給していました。 現在でいえば東京ガス大阪ガスの運営を一手に担うようなものであり、耕地面積の少なさゆえに年貢米を納められず投獄される地主がいるほどの貧しい地域にあっては異色の豊かさだったと言われています。近年はアユや柚、はちみつなどが名産品で、江戸時代からの伝統的な産業が日の目を浴びるようになりました。

そして串本です。台風が本州を直撃すると度々名前が出てくる潮岬のあるまちで、本州最南端のまちとして有名です。世界唯一の「非サンゴ礁海域に存在するサンゴ礁」が確認されており、ラムサール条約に登録されています。エルトゥールル号の一件も串本近海の出来事で、日本とトルコの懸け橋となったまちでもあります。こういう地元の人の懸命の救助活動に感銘を受けた日本人って多いんじゃないでしょうか。当時のオスマン帝国国民は大変感動したそうですし、トルコ側もイランイラク戦争の時には恩返しをしてくれました。胸アツですね。こういう温かい話大好きなのでもっとください。

「くろしおで北上」的なことをさっき書いた気がしますが、串本までは経路的には南下しているので、改めてここからくろしおで北上していくと申し添えておきますね。

和深駅を通過します。とても景色のいい駅ですね。次来たときは降りてみたいです。

ライトブルーの鮮やかな海を眺めながら進みます。串本の次は周参見です。

周参見の由来は「風が吹きすさんでいたから」だそうです。要は周参見は「遊み」や「荒み」の当て字ってことですね。

周参見は6世紀ごろから南紀地方の中心支配地として発展しました*12。まあ今その覇権を握っているのはどう考えても田辺市新宮市なので歴史ってこわい。

鉄オタの皆さんならだれもが名前を知っている宮脇俊三氏は、すさみ町の江住や見老津あたりが紀勢本線の車窓でも一番優れている的なことを言っていたので、とりあえずオタクは紀勢本線から太平洋を眺め続けることをおすすめします。さいがき的にも後悔はさせません。

ただしところどころ電波が入らないので気を付けてくださいね。

周参見からはいったん山へ入り、長めのトンネルをくぐります。そうすると電車はついに白浜町へと入っていきます。

停車時間が合ったのでちょっとだけ外に出ました。昔は瀬戸鉛山村(せとかなやま-むら)とかいうごつい名前でしたが、町制施行の際に、鉛山湾の白い砂浜*13からとって白浜町に改称しました。ちなみにこの白い砂浜は現在の白良浜です。

ほんとこのロゴ好き。海のリゾート特急としての283系"オーシャンアロー"の完成度高すぎません?マジでデザインした人天才だと思う。

白浜駅からは乗客も一気に増えて、車内が賑やかになりました。ちょうど海水浴シーズンだしね。子供連れや外国人も多かったです。

そういえば新宮から白浜までで大体2時間かかっています。個人的にはめちゃくちゃ短く感じましたが、ここから天王寺まではさらにもう2時間かかります。和歌山県ひっろ。

上富田町唯一の鉄道駅で、珍駅名の朝来駅(あっそ-えき)*14を通過し、普通列車の運転系統が分かれる紀伊田辺です*15田辺市はこの一帯だと一番大きいまちで、和歌山県内でも2位の経済規模と人口を誇ります。まあそれもそのはず、田辺市は海岸線から和歌山県の奥深くの熊野本宮大社あたりまでが全部市域である関西で一番広い市で、全国でもトップ30以内に入るような市なのでまあ相応に人口も多い訳です。

なんならほぼ奈良県みたいな位置。

まあバグみたいな広さしてますが、経済力が和歌山県内2位なのもまぎれもない事実なので、田辺はれっきとした南紀の中心地です。これだけは間違いありません。

ぽつぽつと市街地が増えてきましたが、まだまだきれいな海は健在です。

電車は紀伊田辺を出ると御坊まで止まりません。

読んで字のごとく寺内町として発展した御坊市。この辺りからは紀南ではなく紀中地域に分類されるようです。スイートピーの花卉栽培が盛んなまちで、その生産高は日本一なんだそうです。御坊からは紀州鉄道線が分岐しており、それも私的に気になる路線なので、早めに再訪したいところですね。ちなみに御坊市の中心街は紀伊御坊駅あたりです。

16号は湯浅や箕島を通過し、海南まで止まりません。

海南まで来てしまうと工業都市感が出てくるので、この辺りからは観光路線みも薄れます。とはいえ海南市の黒江地区は紀州漆器で栄え、今でも古い町並みが残されている地域ですので、観光地に乏しい訳ではありません。確か重伝建地区とかではなかった気がしますが、鋸の歯のような街並みが有名ですので1回行ってみたいです。

そしてついに和歌山へ到着。かつての中心駅は現在の紀和駅でしたが、南海東和歌山駅*16が戦時私鉄買収なんかを経て国鉄の東和歌山駅と統合された結果、徐々に和歌山駅の地位は転落。和歌山線のルートが東和歌山駅へ向かうルートに移されたのをきっかけに東和歌山駅和歌山駅になり、かつての和歌山駅紀和駅にそれぞれ名前を変えました。市の中心街は和歌山市駅の方が近く、繁華街は和歌山駅の方が近いので、かつて紀和駅和歌山市の代表駅だったといってもにわかには信じがたいかも知れませんね。

前日夜*17に上流でゲリラ豪雨があったためか、川の水がめちゃくちゃ濁っていました。この川は紀の川で、和歌山の市街地の北縁を流れています。

次の停車駅は大阪府泉佐野市の日根野です。

関西空港線が分岐することもあり、くろしおが全列車停車するようになった日根野駅。中心は確実に南海の沿線なのですが、JRの車庫があったり、日根野行きの列車が運行されていたりもするので、関西でもそれなりの存在感はあるんじゃないでしょうか。ただし駅の周りを地図で見てもこれといって何もありません。悲しいなぁ...

阪和線を快調に飛ばし、いよいよ下車駅の天王寺が近づいてきました。私もそれなりに各地の鉄道路線は乗車してきましたが、こんなに楽しい思いをしたのは初めてかもしれません。そのレベルで心が弾みました。景色もきれいだしね。今度は沿線各所をゆっくり巡ってみたいものです。

天王寺に到着しました。くろしおばいばーい!

 

というところでちょうどいいかな?いったん締めたいと思います。

283系も置き換えの噂が後を絶たず、正直私も焦っていたのですが、今回なんとか乗車することができてほっとしています。紀勢本線は景色もいいし沿線も魅力たっぷりなのでまた時間をかけていろいろ巡りたいです。

 

これ以降はいつも通りのビッカメ巡りになるのであんまり楽しくないかもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです。それではまた!

*1:ただしさいがきはどちらかと言えば赤い方のチームの方が好き

*2:腰に関してはバス会社でどうにかできる問題ではありませんが...

*3:あのうつ。武備史における博多津 坊津と並ぶ古代日本の三大港湾。その中でも特に平安京に近かったため、当時は単に「津」というと安濃津を指していたといわれています。

*4:ただし県庁所在地は四日市町に移されたことがある

*5:館山とか原ノ町とか村上とかもろもろ

*6:車両の下のふちを赤く塗っているあたり故意犯ですが。

*7:「くろしお」用の289系がもともとは北越急行の683系がやってきたことで北陸本線を追い出された「しらさぎ」用の683系であったことを考えるとなかなか皮肉なチョイスをしているふうにも思えます。

*8:焼津(静岡) 三崎(神奈川)に次いで全国3位の陸揚げ量を誇る

*9:こちらはもとは「勝占」だったらしい。

*10:舎人親王の伝承が由来とされているが、町内に勝占神社があるため多分これも忌部氏由来の地名だと思います。

*11:まずそもそも徳島県勝浦町は海が無い。

*12:1657年に口熊野奉行所が置かれてからは名実ともに南紀支配の中心地となりました。

*13:砂の流出が止まらないのでオーストラリアから砂を輸入しているとか。なお海中の砂は黒ずんでいるため、白良浜がなぜ白いのかは未だにわからないことが多い。

*14:ちなみに兵庫県朝来市には朝来駅(あさご-えき)が所在しています。

*15:さっきまでは1つの自治体で1駅は止まっていたくろしおですが、この辺りからは1つの駅もくろしおが止まらない自治体が増えてきます。

*16:さらに元をたどると阪和電気鉄道阪和東和歌山駅だった

*17:俺がヤコバに乗っている頃